素晴らしい一日となりました。抜けるような青空の下、堅香子(かたかご)との逢瀬が叶ったのです。今日は西武鉄道主催ウォーキング&ハイキング第「20回 西武沿線花さんぽウォーク/”遊”名山30を歩こう!『あしがくぼ山の花道・カタクリを訪ねて』」です。
朝方はチョッとひんやりするものの、日中の天気予報では20度を超えるという予想の西武秩父線「横瀬(よこぜ)駅」から8時45分にスタートを切ります。
コースは去年の11月3日のGallery51「第26回 奥武蔵ハイキング 風の道・武甲の里を歩く」のほぼ逆コースになります。吹き渡る風は既に春のそれであり、最初からジャケットを脱ぎ捨て半袖のTシャツの井出達で歩みを進めます。先週までの硬く閉じた蕾が嘘のような満開に近い桜の花と、道端の「オオイヌノフグリ」「ホトケノザ」「スミレサイシン」等の野の花が我々を出迎えてくれます。
道は武甲温泉を流れる横瀬川に泳ぐ大量の鯉のぼりを眺めつつ、右折して「寺坂の棚田」へと向かいます。棚田とは、山あいの傾斜地を切り開き、石を積み重ねて土を盛り、谷の水を引いて作られた水田のことです。その風景はふるさとの原風景として私たち中年にとっては懐かしい風景でもあるのですが、如何せん山村の過疎化、農業の担い手の高齢化、後継者不足等の中で、効率の悪い棚田は真っ先に減反の対象となり、今存亡の危機に瀕しているのです。ここ「寺坂」の棚田も寂しい限りですが畑に転用されたり放棄された田んぼが目立ち、写真でよく目にする「千枚田」のイメージは全くありませんでした。
コースは第七番札所「法長寺」を右手に、第六番札所「卜雲寺」を左手に見て、六番峠ハイキングコースに入っていきます。ここからはかなりの長丁場の歩きとなり、「日向山」に近づくにつれ斜度も徐々に増していきます。「二反沢」の社からは階段歩きとなりますが、それこそ途方もなく急な階段で、張られたロープを辿らないと登れないようなもの凄さです。当然Tシャツもバンダナも汗まみれ。膝はガクガク、心臓はバクバクでやっとのことで「日向山」山頂に着いたのでした。秋の山頂であれば奥武蔵の山並みがくっきりと見えるのですが、春霞でしょうか、全体的に霞んで眺望は良くありません。
「日向山」の急斜面を逆方向へしばし下ると、そこが「あしがくぼ山の花道」と呼ばれるカタクリを代表とする山野草の群生地となっています。カタクリは種子が地中に入ってから平均8年目でようやく2枚の葉を出して開花し、樹冠が緑の葉に覆われる前(3〜4月)のわずかな日光を利用して地下の鱗茎を太らせて花を咲かせ、花のあと5月頃に葉も枯れたあとは次の年の3月まで、1年のうちの10ヶ月の間は地中で球根のまま休眠する植物です。このように、早春、他の花に先がけて花を咲かせ、逆にまわりの木々や草がすっかり緑になる季節になると地上から全く姿を消してしまう植物のことを、ヨーロッパでは「スプリング・エフェメラル(春のはかない命)」とか「エフェメラルプラント(短命植物)」と呼んでいます。
昔は、カタクリの球根から”片栗粉”(かたくりこ)を採っていましたが、現在は8割がじゃがいも、2割がさつまいものでんぷんから作られています。古名ではカタクリのことを「傾籠(かたかご)」と呼びます。籠を傾けたようにして咲くところから、それがしだいに「カタクリ」となったものらしいのです。
前置きが長くなってしまいましたが、カタクリは暑さに弱い植物で余り日の差し込まない北斜面に群生しており、遊歩道とロープや竹垣が張り巡らされた「日向山」の北斜面には数え切れないくらいのカタクリの花の競演が繰り広げられていました。
丁度見頃を迎えたカタクリの花は、相も変わらず妖艶で神秘的な美しさを漂わせ、時間が許すならばいつまでも逢瀬を楽しみたい高貴な神々しい姿でした。古の人々がこの高貴な姿のカタクリを食用にしていたとはどうしても信じられないのです。願わくばそれは古の人々の春の白日夢であって欲しいと願いつつ。
カメラのファインダーを通して語らうこと30分余。あっという間にカタクリとの逢瀬も終わってしまいました。そうそう、カタクリの花言葉は「初恋」です。うつむき加減に咲く花姿は、ひたむきに好きな人を想う気持ちの表れなのでしょうか。山野の中でハッと引き付ける魅力を持つ美しい花。恋をしてしまった私はみたび1年後の逢瀬を約して、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にしたのでした。
帰りは「芦ヶ久保駅」を目指して下るだけです。恋人に逢え、最近になく晴れ晴れした気分です。「芦ヶ久保駅」からは「秩父駅」へ逆戻りして特急「ちちぶ号」を予約し、地酒秩父錦を購入すると、カタクリに想いを馳せながらチビリチビリ杯を進めつつ池袋を目指したのでした。
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